このブログを読んでくださっている方々のほとんどは、最初に学習した外国語が英語だと思います。似た単語が多いので、ベースに英語があるとスペイン語のボキャブラリーを増やすのに役立ちますね。でも、似ているけれど意味が違う単語には注意が必要です。
このような単語を言語学的には ≪falsos cognados≫ といいます(cognadoはラテン語起源で「同族」の意味=consanguíneo、con un mismo antepasado)が、一般的に ≪falsos amigos≫ (空似言葉)と呼ばれています。
Falsos amigos には3種類あります。
1. 発音が同じか似ている 例:nudo (knot) ≠ nude (desnudo)
2. 綴りが同じか似ている 例:arena (estadio) ≠ arena
3. 語源が同じでも意味が異なる 例:suburb (población cercana a la ciudad) ≠ suburbio (barrio de perfil económico bajo)
それでは、日常で出会う代表的な❝いつわりの友❞を挙げてみます。
🌻billion(10億)≠ billón (一兆)
英語の billion を辞書で調べると、アメリカ用法では「10億」、イギリス用法では「1兆」ですが、1970年代の後半からはほとんどの英語圏で基本的に「10億」だそうです。アメリカ英語の影響が強い中南米のスペイン語でも同じですね。
でも、スペインではbillón は1兆、10億は mil millones です。
billón は millón(ゼロが6つ)のmi- がbi-(2、重)に置きかわっているので、millón の2乗、つまり1兆(ゼロが12)を意味します。
認識が異なるかもしれないので、念のため、billón を用いるときには桁数を確かめたほうが良いですね。
🌻compromise(妥協、譲歩、和解)≠ compromiso (約束、義務;苦境)
この「妥協」という言葉、簡単に置き換えられるスペイン語の定訳がありません。
「妥協する」はスペイン語で transigir、ceder、llegar a un acuerdoなど、状況により訳し方が変わります。
「妥協」も定訳がなく、arreglo、ajuste、consentimiento parcial、acuerdoなど状況に合わせた訳し分けが必要です。
RAEによる ≪transigir≫ の定義は次のとおりです。
【自】Consentir en parte con lo que no se cree justo, razonable o verdadero, a fin de acabar con una diferencia.
【他】Ajustar algún punto dudoso o litigioso, conviniendo las partes voluntariamente en algún medio que componga y parta la diferencia de la disputa.
日本語の「妥協する」の語感とほぼ同じですね。
🌻prospect(見通し、展望、見込み客)≠ prospecto (説明書、PR用のビラ)
prospect はスペイン語の perspectiva、posibilidad、panorama などに相当します。
一方、スペイン語の prospecto は医薬品の説明書の意味で使われることが多い単語です。
🌻argument(議論;口ゲンカ)≠ argumento (根拠;プロット)
この2つもそっくりですね。英語の argument は「議論」(debate)、話し言葉では「口論」(discusión)の意味で使われることが多いですが、スペイン語の argumento は提案や主張の「根拠」、もしくは映画や小説の「プロット、あらすじ」を意味します。
例:El argumento convincente del abogado me hizo cambiar de opinión.
弁護士の説得力ある論拠が私の考えを変えた。
🌻① sensitive(敏感、繊細な)≠ sensitivo(sentidoの)
② sensible(英:分別のある)≠ sensible(西:敏感、繊細な)
これも混同しやすい空似言葉の代表例です。
1. 英語の sensitive が「感じやすい」「デリケートな」という意味で使われている場合は、スペイン語のdelicadoやsensibleがこれに相当します。
sensitive と綴りの似た sensitivo は「感覚の」(referido a los sentidos)という意味です。
2. 英語の sensible は「分別のある」「良識がある」という意味で、スペイン語のrazonableにあたります。
スペイン語の sensible は、「感じやすい」「デリケートな」という意味です。
🌻topic(話題、テーマ)≠ tópico (ありふれた、ワンパターン)
カタカナ英語の「トピック」が日本語に浸透しているので、スペイン語の tópico を見るとつい「トピック」を連想してしまいますが、スペイン語はpoco originalの意味で、月並みな表現、ワンパターンな思考など、ネガティブな語感があります。
また、薬に関する医学用語として用いられる場合には、 tópicoは局所・外用薬/剤 を意味します。
例: Este medicamento se administra por vía tópica.
この薬は外用薬です。
casual(カジュアルな)≠ casual (偶然の)
英語の casual が「くだけた」「何気ない」「カジュアルな」という意味で使われる場合、informal、despreocupado、desenfadadoなどがこれに相当します。
例: A casual long-sleeved shirt ⇨Una camisa informal con manga larga
カジュアルな長袖シャツ
A casual conversation ⇨Una conversación desenfadada
なにげない会話
🌻to assist(手伝う、助ける)≠ asistir (アテンドする、随行する)
この2つは自動詞の時はどちらも「出席/列席する」ですが、他動詞で意味が変わります。
他動詞の to assist の意味は「(人を)手伝う、手助けする」なので、スペイン語だと ayudar です。
一方、asistirには socorrer、favorecer、ayudar の意味もありますが、acompañar、atenderの意味で使われることが多いようです。
to realize(~だと気づく)≠ realizar (~を実行する、実現する)
to realize には「実現する」の意味もありますが、「~だと気づく、悟る」の意味で使われている場合、これに対応するスペイン語はdarse cuenta deです。
例: Do you realize what you've done? 自分が何をしたか分かってる?
¿Te das cuenta de lo que has hecho?
🌻to pretend(~のふりをする)≠ pretender (~を志す、~をしようとする)
スペイン語の pretender は querer ser、querer conseguir algo、aspirar a ~ のことで、「~のふりをする」はfingir です。
例: You pretend you didn't hear that. 君は聞かなかったフリをしてる。
Estás fingiendo que no lo has oído.
to support(サポートする、応援・支持する)≠ soportar (耐える、我慢する;負荷などを支える)
「サポートする」はayudar、「支える・応援する」はapoyarが使えますね。
スペイン語の soportar には、tolerar(耐える、我慢する)、sostener(重みなどを支える)の意味があります。
例: No puedo soportar conductas incívicas.
私は公衆道徳に反するふるまいには我慢ができない。
Esta pared maestra y la viga soportan todo el peso del techo.
この耐力壁と梁が天井のすべての重みを支えている。
副詞の空似言葉
Actually: en realidad (実は、実際)
Actualmente: ahora (今、現在)
Eventually: finalmente (結局)
Eventualmente: de manera eventual o circunstancial
※ eventualmente を provisionalmente や temporalmente(臨時で、一時的に)と訳すのは適切ではありません。出典: https://www.rae.es/dpd/eventual
Ultimately:al final(最終的に)
Últimamente:recently(最近)
いつわりの友には気をつけるようにしましょう。
(2021年5月現在の情報に基づきます)
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