不定代名詞の «alguien», «nadie», «alguno, -a, -os, -as», «ninguno, -a, -os, -as» を使って「誰か~」「誰も~ない」を訳すときに気をつけるポイントをまとめてみました。
(2022年7月6日更新)
「誰か~(肯定文・疑問文)」「誰も~ない(否定文)」というときの「誰」は、
① «alguien», «nadie»
② «alguno, -a, -os, -as», «ninguno, -a, -os, -as»
を使って訳しますが、使い分けのルールがあります。
まず、不定代名詞①と②の基本的な違いを確認しておきます。
① «alguien», «nadie» は単に「人」をさして使います。性数変化はしません。
② «alguno, -a, -os, -as», «ninguno, -a, -os, -as» は対象範囲(グループ、全体)が文脈で限定、意識されているときの「人」に使います。性数変化します。
Nota: ②は動物やモノにも使いますが、ここでは人をさしていることを前提にお話しします。
では、例文を見ながら、①と②の使い方を確認してみましょう。
肯定文・疑問文の「誰か~」
(a) 誰かいますか~?
¿Hay alguien?
✘ ¿Hay alguno?
Alguien と alguno の違いが一番分かりやすい例です。
例えば、静まり返ったオフィスに誰かいるかどうかを確認したいときに「誰かいますか~?」って聞きますよね。
この場合、単に人がいるかどうかを聞いているので alguien を使います。「人」は誰であっても構いません。
一方 alguno は、話の流れ(コンテクスト)の中で対象となる「人」の範囲(属性や性質)が限定されているときに使うので、上記のシチュエーションで使うのは適切ではありません。
次の例でもう少し詳しく説明します。
(b) 誰か来ると思う
Yo creo que alguien vendrá.
▲Yo creo que alguno vendrá.
「誰か来ると思う」という日本語の一文だけだと、この「誰か」の範囲(属性や性質)を限定する情報が何もないので、“誰でもよい” alguien を使うのが正しいということになります。
ただし、「誰か来ると思う」と言うまでのやりとりでこの「誰か」の対象範囲が明らかである、限定されている場合は代名詞の alguno が使えます。例えば次のような場合です。
– ¿Sabes si los estudiantes vendrán a la clase opcional de hoy?
– Yo creo que alguno vendrá.
今日の選択授業に生徒が来るかどうか知ってる?
誰か来ると思うよ。
このやりとりでは話の対象が「生徒」であることが明らかです。したがって “誰でもよい”「誰か」 alguien ではなく、「生徒のなかの誰か」(alguno de los estudiantes, algún estudiante)なので alguno を使います。
Nota:Alguno, -a, -os, -as は名詞を限定する修飾詞(例:algún estudiante vendrá)の場合と、代名詞(例: alguno vendrá)の場合があります。
(c) 誰か知っているだろう
Alguien sabrá. ➡不特定の人
▲Alguno sabrá.
これも(b)の例と同じです。話の流れで対象範囲が特定のグループ(例えば chicos, expertos, estudiantes など) とわかっているときに、そのなかの「誰か」が知っているだろう➡ Alguno sabrá と言うことができます。
(d) 君たちのなかの誰かが知っているだろう
Alguno de vosotros sabrá.
✘ Alguien de vosotros sabrá.
Nota:全体の一部をさす「~のなかの誰か」というときに alguien は使えません。Alguno de... です。
例:
alguno de los presentes, alguna de las participantes, algunos de nosotros, algunas de las afectadas.
Nota:上記の例のように「~のなかの誰か」と言いたいとき、全体を男性形、その一部(alguno, -a, -os, -as)を女性形にするのは正しくありません。
例:✘Algunas de los estudiantes
たとえ全体が男女混合で、そのなかの「誰か」が女性だけであるとしても、concordancia(一致)のルールに従って
Algunas de las estudiantes
としなければなりません。
※スペイン語の concordancia のルールは複雑なので、これについては別のブログで取り上げたいと思います。
否定文の「誰も~ない」
「誰か~」は否定文(誰も~ない)になると、«alguien» が«nadie» に、 «alguno, -a, -os, -as» が «ninguno, -a, -os, -as» に代わります。使い方のルールは肯定文の場合と同じです。
肯定文・疑問文 | 否定文 |
alguien | nadie |
alguno, -a, -os, -as | ninguno, -a, -os, -as |
(e) 誰もいませんか~?
¿No hay nadie?
✘ ¿No hay ninguno?
最初の(a)と同じく、静まり返ったオフィスに人がいるかどうかを確認するシチュエーションだとしましょう。
ここでは否定文で聞いているので、nadie を使います。
問題は人がいるかどうかであって、対象となる「人」は誰でもよいので、 ninguno を使うのは適切ではありません。
(f) 誰も知らないだろう
Nadie sabrá =No sabrá nadie*.
▲Ninguno sabrá.
(c)の比較と同じです。Ninguno sabrá は、話の流れで対象者の範囲(~のなかで)が限定されているときの言い方です。
*Nota:Nadie が動詞の後にくる場合は、動詞の前に no が必要です。Ninguno も同じです。
(g) 君たちのなかの誰も知らないだろう
Ninguno de vosotros sabrá.
No sabrá ninguno de vosotros.
✘ Nadie de vosotros sabrá.
これは(d)例と同じです。
注意:全体の一部をさして「~のなかの誰も~ない」というときに nadie は使えません。Ninguno de... を使います。
例:
ninguno de los presentes, ninguna de las participantes.
(h) 誰も完璧ではない
Nadie es perfecto.
▲Ninguno es perfecto.
これまで見てきたように、Ninguno es perfecto は文脈上、範囲が特定できているグループの中で「誰も~ない」という場合の言い方です。
例:Ninguno (de los jugadores de este equipo) es perfecto.
(このチームの選手のなかの)誰も完璧ではない。
脈絡なくいきなり "Ninguno es perfecto" と言ったら、 ¿Ningún qué? と聞き返されることでしょう。
補足:Ninguno es perfecto を「誰も完璧ではない」と訳すと誤訳になる可能性があります。対象が間違いなく「人」だとわかっている場合は問題ありませんが、そうでない場合は「完璧なモノはない」=Nada es perfecto と解釈するのが自然です。動詞が saber や pensar なら行動主体が「人」だと想像がつきますが、ser はそういうわけにはいきません。いずれにしても、脈絡なくいきなり "Ninguno sabrá" "Ninguno es perfecto" と言うのはおかしなスペイン語です。
(i) 誰も彼女を説得できない
Nadie la puede convencer. No la puede convencer nadie.
=No hay quien la pueda convencer.
▲Ninguno (de su entorno) la puede convencer.
ここまでくればもう説明は不要ですね。
まとめ
「誰か~」 や「誰も~ない」と言うときには、話の流れで対象範囲(グループ、全体)が限定、意識されているかどうかに気をつけて、不定代名詞を使い分けるようにしましょう。
(2021年11月現在の情報に基づきます)
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