日本語には雨に関する表現がたくさんありますが、いろいろな雨の種類や降り方をスペイン語ではどう表現するのでしょうか。
雨にもいろいろ・・・
雨の多い国だけあって、日本語には雨に関する表現がたくさんあります。小雨、霧雨、小ぬか雨、ポツポツ降る雨、天気雨、にわか雨、夕立、どしゃ降り、ゲリラ豪雨...。
スペインでもひときわ雨の多いガリシア地方の公用語、ガリシア語には雨の種類を表す単語が100近くもあるのだそうです。
スペイン国内でも地方によって雨の表現の仕方は様々ですが、ここでは標準的なスペイン語の表現に絞ってまとめてみました。
AEMETの降水分類
日本の気象庁にあたるスペインの AEMET(Agencia Estatal de Meteorología)の気象用語マニュアル2015年版では、降水(precipitación)をおおまかに次のように分類しています。
Llovizna 弱い雨 雨粒が直径0.5mm未満
Lluvia 雨 Lloviznaより雨粒が大きい
Lluvia engelante = lluvia gélida(着氷性の雨、雨氷 =freezing rain)
※みぞれ(aguanieve)ではありません。
Chubasco = aguacero 短時間に集中して降る大粒の雨
Nieve 雪
Granizo 雹(ひょう)
テクニカルな用語、分類なので、lluvia engelante なんていってもスペイン人でもピンときません。
では、日常生活レベルでの感覚的な雨の表現をみてみましょう。
傘をささなくてもしのげるくらいの雨
Llovizna(動詞は lloviznar または caer llovizna)はスペイン人ならまず傘をささない、非常に弱い雨です。日本語の「霧雨」や「小ぬか雨」といった感じです。
バスク語が起源の sirimiri も同義語ですが、オノマトペからきている(らしい)だけあって、音からしてすでに霧雨っぽいですね。
Calabobos(口語)はしとしと降り続ける弱い雨。
同じく弱い雨の表現に chispear という動詞があります。こちらは「ポツポツ降る」、「小雨がパラつく」感じで、ⅼloviznar よりも雨粒が大きいイメージです。
雨がパラつく、ちょっとだけ降る、は caer cuatro gotas です。
傘がないと困る雨
Lluvias と呼べる雨になると、スペイン人でも傘をさしたくなります。
Lluvias の強さは débiles<fuertes<muy fuertes<torrenciales と上がっていきます。日本語なら小雨、本降り、大雨、どしゃ降り、激しい雨、豪雨...という感じでしょうか。
大気の状態が不安定なときに発生する雲は nubes convectivas(対流雲)ですが、そのなかでも cumulonimbus(積乱雲)の発生で短時間に非常に強く降る「にわか雨」「通り雨」「夕立」にあたるものに chaparrón,aguacero,chubasco があります。
この3つの類義語について、AEMETとRAEでは定義が微妙に異なります。
AEMETによると chubasco = aguacero ですが、
RAEは chubasco を「強風を伴うもの」と定義しています。
Chaparrón ⇨Lluvia recia de corta duración.
Aguacero ⇨Lluvia repentina, abundante, impetuosa y de poca duración.
Chubasco ⇨Chaparrón o aguacero con mucho viento.
近年日本でよく発生する「ゲリラ豪雨」は、これらに torrencial をつけて表現できそうです。
トルメンタ!
“Durante la noche, se esperan tormentas fuertes...”
夜間は雷を伴った大荒れの天気となるでしょう・・・
Tormenta は、relámpagos(稲光)や truenos(雷鳴)を伴う「嵐」「荒天」です。
雨が降らない tormenta もあるので、「雷を伴う暴風雨」という場合は tormenta con lluvias (muy) fuertes が近い表現になります。
比較:
Tormenta de nieve 吹雪
Tormenta de arena 砂嵐
夏から秋、冬から春の季節の変わり目にスペイン、特に地中海沿岸地方で発生する集中豪雨は gota fría と呼ばれています。
ただ、gota fría は口語なので、発生のメカニズムに関係なく何でもこう呼んでしまう傾向があるようです。
Gota fría は気象学的に説明すると、偏西風から分離した高層の寒冷低気圧(depresión aislada en niveles altos:高層切離低気圧)が暖かい空気と接触して対流が発生し、大気が非常に不安定になることで発生する気象現象だそうです。正式には高層切離低気圧の頭文字をとって DANA(ダナ)と呼ばれます。DANAはスペインのメディアにもよく登場する単語です。
ちなみに、最近よく聞く ciclogénesis explosiva(通称「爆弾低気圧」)とDANA は気象学的には別のものだそうです。
雨が降る降る...
雨の降り方にはいろいろな表現があります。
▶Llover a cántaros どしゃ降り、ざあざあ降り
▶Caer chuzos de punta 雨、雪、みぞれ、雹が激しく降ること(※Chuzo はキリのような形状の中世の武器のことです)
▶Caer una tromba de agua 滝のような/バケツをひっくり返したような雨
▶Caer una manta de agua 〃
▶Caer la mundial も上記の2つと同じ意味で使いますが、新しい慣用表現なので収録している文献はまだ少ないようです。
▶Diluviar 豪雨になる
▶Diluvio 洪水、豪雨(口語)
局地的に降る雨 Lluvias aisladas/dispersas
ある地域全体に降る雨 Lluvias generalizadas
一時的に降る雨 Lluvias ocasionales
降り続ける雨 Lluvias persistentes/continuas
降ったり止んだりの雨 Lluvias intermitentes
雨の晴れ間 Escampada
雨に関係したことわざ
Lluvia de mañana o mucho o nada.
朝雨に傘いらず
(En) abril, aguas mil.
4月の多雨
Agua de mayo, pan para todo el año.
5月の雨は豊穣をもたらす
→ Como agua de mayo は 「絶好の」「タイムリーな」
Nunca llueve a gusto de todos.
あちらを立てればこちらが立たず
Al mal tiempo, buena cara.
つらい時こそ明るい顔で!
(2021年5月現在の情報に基づきます)
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